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最高裁判所第一小法廷 昭和34年(オ)249号 判決

上告人 篠岡善明

被上告人 国

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人篠岡善明の上告理由について。

しかし、原判決はその判文及びその引用にかかる第一審判決の判文によつても明かなとおり、所論鑑定人谷川素彦の鑑定の結果のみによつて所論の判断をしているのではなく、当事者間に争のない判示事実及びその挙示の証拠並びにその証拠によつて認定される判示事実等を綜合して本件建物の公売当時における価格は少くとも一六、七万円であつたと認定した上証拠によつて認められる競落に至るまでの経路に鑑み本件収税官吏が本件建物の見積価格を判示価格と定め金一三万円で公売したことは多少低廉な憾はあるが不当に低廉な見積価格及び公売価格であるとは認められないと正当に判断しており、その判断の過程に所論の違法ありとは認められないし、またこれによつて上告人の権利を不当に無視したものとも認められない(従つて憲法違反の主張はその前提を欠く)。それ故所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 下飯坂潤夫 斎藤悠輔 入江俊郎 高木常七)

上告理由

一、原判決によれば

「鑑定人長谷川素彦の鑑定によつても伴件見積価格が未だ不当に低廉とは云い難くこれが見積評価に過失があつたことを認めるに由ないから」との理由により上告人敗訴の判決が言渡されたが鑑定人の鑑定の結果を見ると鑑定の要素又は基準について全然研究せず社撰である。

所謂不動産の鑑定については時価式評価法又は原価式評価法等とか一定の基準又は方式により鑑定すべきものである。

二、原審が採用して居る鑑定人谷川素彦の鑑定書を見ると其点については一切触れて居らず鑑定そのものについても不明瞭である。

三、本件の主題となるべき評価格を原審が社撰な鑑定に基いて正当なものであつて不当に低廉とはいい難く過失がないと判断して判決を言渡したるは失当である。

四、客観的に考えても木造瓦葺二階建四九坪二合五勺の家屋が金拾参万円で競落されることについても競売の方法について欠缺がある。

五、前項の如き欠缺に基き国家が滞納処分により競売をなし国民に不測の損害を与えることは人権を無視して居る。

六、斯の如き方法により上告人が受けた損害について国家に対して賠償を求むる本訴請求について第一審及び原審が採用した根拠の判断に齟齬がある。

七、上告人は以上の理由に基き原審判決は民事訴訟法第三百九十五条第一項第六号及び憲法に基く人権無視したものであるから上告をなす次第である。

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